撮影旅行の思い出
九州とは意外に嶮しひところです。思いの外寒くもあり、来たばかりの頃は戸惑ひました。
貧乏旅行故、今日は何を撮ろふか、頭の中でダイヤを思い出そふとして空腹を誤魔化します。見通せなひ山の鉄道だと、遠く汽笛が聞こへることが多ひです。音はすれど姿は見へず。だいぶ時間が経ったころに、汽車がやってきます。
不思議なもので、さふなると先ほどまでフィルムの残りを気にしながら、次の列車は撮らなひと決めていながらも、つひつひ一枚シャッターを切ってしまひます。
今思えばなんでこんな手紙を書こうとしたのだろうか。だが、片付けていた写真の中に見つけた書きかけの手紙は記憶再生のキーとなる。
ゆっくりゆっくりと急坂を登っていく列車。間もなくスウィッチバック。一気に山を上りきってしまいたいが、そうもいかない通過点。鈍行列車も急行列車も必ず止まらねばならないところ。
小雪のちらつく中で、なんでこんな名前もない列車の写真を撮ったものだろうかと思ってもしまうが、名も無き一列車が堪らなく懐かしい。
舞台は九州のつもりですが、特にどこというわけでもないです。ただ、九州はスイッチバックのイメージがあるので、山肌を縫っていくイメージで作りました。
雪国ではない冬をどう表現するのか悩んだ末、枯れ草と緑の針葉樹で表現しました。雪もほんの少しだけ降らせてありますが、写真では殆どわかりません。
また、急坂を強調するために、実際以上の急坂・急カーブにしてあります。奥行き間を出すことは出来たと思います。
初挑戦の蒸気機関車は有井のD51-51。煙と蒸気、ライトは合成ですが、煙をどう処理するかが非常に難しいです。ただ、蒸気だけならなんとかなるのではないかなということも判明したのは収穫。