小貨物駅

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 本線の上を列車が走らなくなってからどれくらいたつのだろうか。かつて駅であった場所から少し離れた側線に小さな貨車が一輌。傾きかけた日の下で、まるで待ちぼうけにあったようにぽつりとたたずんでいる。
 貨物ホームだったと思しき所にはコンテナーが1個。蔦に覆われている。時間の止まったようなこの場所。やがて「ここに鉄道があった」ことも人々の記憶から消えていくのだろう。

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ヒグラシの鳴く駅で

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 観光客の喧騒とは無縁のローカル線。何も無いことを求めてやって来るには最高の場所。何も無い…何も無い…太陽、空気、風、そして錆とオイルの匂い。何も無いわけがない。
 日も傾き、ヒグラシが鳴き始めた頃、因幡から来た列車と美作からやってきた列車がすれ違う。
 どこかひんやりした暑さの中、ディーゼルの熱風が吹く。汽笛。そう、何も無いことを求めてきたのではなく、このひと時を求めてやって来たのだ。

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シュプールを夢見て

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 明日のシュプールを夢見て……と言っても、夢を見るほどの深い眠りに着く事はできない。主要駅に停車するたびに段々と雪景色となって行く窓の外を眺め、明け方になってようやくうつらうつら。
 雪深いプラットホームに降り立つと、ろくに眠って居ないはずなのに目が冴えてくる。バスに乗り継ぎ、いよいよゲレンデだ。手にした荷物も、肩にに担いだ板もなんのその。一番早いバスに、一番最初に乗るべく自然と足取りが軽くなっていく。

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山々に抱かれて

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 越後と会津の国境を超えて只見線のレールは延びている。
豪雪地帯の山岳路線で、長いトンネルが連続しているが、そのトンネルの切れ間切れ間に切り取るべき一瞬が存在する。
 残雪を抱く美しい山々に見守られ、爽やかな風を身に受けて、その懐を謙虚に走り行く列車は、トンネルを出て短い鉄橋を渡るとまたすぐにトンネルの闇に吸い込まれてしまう。
 山々にこだまする警笛が消えてしまうと、さらさらと鳴る木々の葉と渓流の音、そして蝉の声しか聞こえなくなった。

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青い闇、白い雪

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 音もなく降っていた雪が音もなく止んだ夜の駅。すっかり冷えきったホームには、雪をこびりつかせてやってきた列車が休憩中。折り返すまでのひと時、寒さに身を縮こまらせている。
 ここは夢の世界か現実か。列車とホームの灯りがぼんやりと周囲を照らし出す。


 青い闇、白い雪。静寂と冷気が全てを包み込む。

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夏の終わり

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 誰そ彼。薄暗く、しかし明るく、不思議な時間。終わりの近い夏に気づいてしまい、無性に悲しくなる不思議な時間。
 鳴き始めたヒグラシが、私を現実の世界へと呼び戻す。間も無く訪れる宵闇には、虫の音もまじるようになっているに違いない。
 まだまだ、夏はこれからだと思っていたのに、いつもいつも秋は気付かぬ内にすぐそこまでやって来ている。

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いつかどこかで

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 太陽がまばゆいばかりの陽射を投げかける真夏の昼下がり、耳を塞ぎたくなるように鳴いていた蝉の声も、その陽射に比べれば可愛いもの。


南アルプスの麓、小さな駅に蝉の声に代わって吊り掛けモーターの音が響く。オレンジと緑の可愛い顔をした列車がやってきた。そしてホームの手前で警笛一声。


優等列車が通過するこの一瞬、いつか見た気がしたこの景色。